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古事記・日本書紀

高千穂峯

高千穂

ニニギはなぜ高千穂峰に降りなければならなかったのか。

  • 二上:峰が二つある山

 フツヌシとタケミカヅチによって葦原中国(あしはらのなかつくに)は平定された。やがてアマテラスの孫のニニギが天降る。高千穂峰に降り、二上にある天浮橋を通って浮島に立ったニニギは、良い国を求めて不毛の地を進んでいく。日本書紀 巻第二 神代下 第九段 正文小-日本書紀-1-p120

画像について

 雲まで届いている最も高い左の山が高千穂峰で、その右にあるのが二上です。そこから麓まで積もっている水色のものが天浮橋です。天浮橋になりそこねたものと言ったほうがいいでしょうか。固まりきらないうちに天から落ちて山の谷間で固まってしまったようです。

 空は雲に覆われています。もうすぐその雲を押し分けながら、ニニギが姿を現すことでしょう。

こんな風に考えました

天浮橋が無くなっても

ニニギの降りた場所

 日本書紀において、ニニギの天降った場所には二通りの記述があります。一つは高千穂峰に降りるもの、もう一つは高千穂という地にある山に降りるというものです。どちらにしても、一書の中では一つの山だけに降りるという点に違いはありません。

 ところが、上で紹介した正文は少々異なっています。いちど高千穂峰に降りてから、二上に行って、そこから天浮橋で浮島に降り立ったというのです。

天浮橋と峰

 天浮橋は天から降りる時に使うものではないのでしょうか。そもそも、天浮橋を使ったという記述があるのは正文と一書第四のみで、それも二上にある天浮橋を使ったという記述で一致しています。ニニギは高天原(たかまのはら)から直接山の上に降りているのです。つまり、地上から天まで届く山があったということです。

 天浮橋については「オノゴロ」のページで考えました。それと同じように、混沌から下降しきれぬまま固まったものや、いったん地になってから上昇の気の影響で盛り上がったものがあったかもしれません。天と地はそれほど離れてはいません小-日本書紀-1-p36。盛り上がっていったものの中には、天まで届いたものもあったでしょう。天に属するものが天浮橋、地に属するものが峰なのです。

天浮橋は無くなった

 天はどんどん高くなっていきます。天降りに使えるような天浮橋がこの頃にはもう無くなっていたのです。風化したり、天の上昇に伴って地から離れたり、重さに耐えきれずに落ちてしまったりしたのでしょう。それでも天降りはまだ不可能ではありません。天に届いている高千穂峰があります。しかし、それはそれだけを使って地上に降りきれるほど緩やかではありません。そこで、高千穂峰を途中まで下り、二上に移動したのです。なぜなら、そこには天浮橋が地上にまで降りられる形で落下していたからです。

 天降りは、昔ほど簡単ではなくなったようです。やがてニギハヤヒのように、危険な方法を使わざるを得なくなるのです。

その後のニニギ

 天降ったニニギは、そのあとカシツヒメという美しい女性と出会います。カシツヒメは神武天皇の祖父となるヒコホホデミを産みますが、それについては「疑惑――ヒコホホデミの父」のページで取り上げています。