ヤマタノオロチ
ヤマタノオロチはどこにいたのか。
スサノオが知っていたその弱点。
アシナズチとテナズチの娘であるクシイナダヒメが、ヤマタノオロチと呼ばれる大蛇にのまれようとしていた。頭と尾が八つに分かれ、その大きさは八つの丘、八つの谷にわたり、背中に木々を生やした怪物である。
スサノオはクシイナダヒメを櫛に変えて髪にさし、アシナズチとテナズチに八つの桶に酒を用意するよう命じる。それを飲んだヤマタノオロチは酔って眠り、スサノオによって体をずたずたに切り刻まれる。日本書紀 巻第一 神代上 第八段 正文小-日本書紀-1-p91
画像について
高天原に棲むヤマタノオロチが、クシイナダヒメを求めて、天にあいた穴から降りてくるところです。“天にあいた穴”とは、高天原ができる際に固まりきらなかった所や、後から崩落した所などのことです。
体は高天原と同じ青い色をしています。ところどころに草が生えているようです。
こんな風に考えました
ヤマタノオロチのすみか
巨大なヤマタノオロチ
ヤマタノオロチは巨大です。その長さが八つの丘と八つの谷にわたるほどです。古事記では谷八つ、山八つ
小-古事記-p69となっているので、日本書紀よりもさらに大きく感じます。
それほど大きな生物が棲んでいたのは、いったいどこなのでしょうか。古事記には高志
(こし)小-古事記-p69にいると書かれていますが、具体的にそれがどこかは特定できないようです。
しかし想像を絶するその巨大さでは、ほんのわずかな体の動きがその周辺にとてつもない影響を及ぼすことでしょう。あたりのものはことごとく破壊され、かなりの広範囲にわたって甚大な被害が出るはずです。
そのような被害についての記述はありません。ヤマタノオロチはあまり動きまわらなかったのでしょうか。木々が背に生えていたという描写は、その動きの少なさを表しているようにも思えます。すると、ヤマタノオロチはアシナズチ達のいる所からそう遠くない場所に棲んでいた、ということになってしまいそうです。
しかし、それはあり得ません。ヤマタノオロチは酒を飲んで眠っています。これが問題となるのです。
ヤマタノオロチの習性
蛇は酒を飲むのでしょうか。飲んだとしても、酔って眠ってしまうのでしょうか。蛇を酔わすために酒を用いるという作戦は、確実性が低いと思わざるを得ません。それでも、スサノオはその作戦を実行しました。成功する確証があったのです。つまり、酒を飲み酔って眠るという習性がヤマタノオロチにあることをスサノオは知っていたのです。ということは、ヤマタノオロチは過去に酒を飲んだことがあるということになります。
ヤマタノオロチのすみか
しかし、巨大な怪物が酔って眠るほどの大量の酒が自然に存在する場所が地上にあるとは思えません。ヤマタノオロチがアシナズチ達のそばに棲んでいることはあり得ないのです。
ヤマタノオロチはどこで酒を飲み、スサノオはどこでその習性を知ったのでしょうか。スサノオが確実にその習性を知り得る場所にヤマタノオロチがいたことは確かです。
ヤマタノオロチを退治する以前にスサノオのいた場所といえば、地上と高天原だけです。大量の酒が地上で得られない以上、ヤマタノオロチは高天原で酒を飲み、スサノオは同じ高天原でその習性を知ったとしか考えられません。
ヤマタノオロチが高天原にいたのであれば、地上に被害が出るわけがありません。そのような記述が無いのも当然なのです。
大きさ比べ
神々の大きさについては「コトドワタシ」のページで考えましたが、ここではクシイナダヒメ・スサノオ・ヤマタノオロチの大きさを考えてみます。
ヤマタノオロチがわざわざ食べにくることを考えると、クシイナダヒメの大きさは、ヤマタノオロチに対して図くらいの大きさはありそうです。もし普通の人間の大きさだとしたら、怪物にとっては砂一粒にも満たないほどです。食べるという対象にはなりません。
スサノオがクシイナダヒメを櫛に変える場面の古事記の解説小-古事記-p70によると、少女をそのまま櫛に変えたということであり、小さく変えたのではない
とあります。するとスサノオの大きさは、人ひとりを櫛として頭にのせられるほどですから、下の図くらいにはなるでしょう。
こうして見ると、スサノオもクシイナダヒメもとてつもない大きさになってしまいます。ヤマタノオロチが巨大すぎるのですが、記述に従いましょう。なお、「ヤマタノオロチ その二」のページで、ヤマタノオロチが現実に存在できるように考えています。
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